日本史☆ジャーナリー(後編)
30分で出来た。どんだけ適当なんだろう。
日本史☆ジャーナリー(後編)
「大崩壊!悲劇的ビフォーアフター」
番組スタッフが向かったのは、備中のとある郷。大勢の人がいて、活気に溢れる郷だ。
地元の男性「ここは皇極天皇以来二万人の兵力を動員できるという事で「二万郷」と呼ばれているんだ。この郷は俺たちの誇りだよ」
住民たちの顔には自信と希望が溢れ、千年の先も繁栄を続けそうな雰囲気があった。今回の「匠」、八幡神もこれにはにがり顔。
ーいけそうですか?
「行ける行けないではなく、行く。私はその覚悟でここにきています」
そう呟いた匠の顔には不安は無かった。
今回の依頼人は三善 清行さん(朝臣)。朝廷の財源不足を憂いているという。
「目に見える大きな問題が無ければ、意見書の説得力も弱いですから」
栄華を誇る二万郷を寂れさす事によって現状の土地制度の問題を説き、その上で財政改革を具申するのだという清行さん。正義感溢れる面差しに圧倒される。
ーちなみに予算の方は?
「今の朝廷の財源を考えると現物でお支払いするのは難しいんです。代わりに、将来八幡宮を鎌倉に勧請させるということで・・・」
ー八幡神さまはこれで宜しいのですか?
「鎌倉に八幡宮が立つという事であれば、私に異存のあろうはずがございません」
そして運命の日がやってきた。初日以来、清行さんは備中に行っていない。
「どうなっているのか楽しみですよ。不安はありません」
ー匠を信頼していらっしゃる?
「はい。何と言っても神様ですから」
私たちが備中につくと、八幡神が迎えてくれた。
「きっと、ご満足いただけると思いますよ」
頼もしく笑う匠。果たしてどのような仕上がりになっているのだろうか・・・
ーーー何という事でしょう。かつて二万の兵を動員したという繁栄は消えうせ、人の気配一つ感じられません。
「まさか、これほどとは・・・」
言葉を詰まらせる清行さん。しかし「匠」の名人芸はそれだけではなかった。
「これを、ご覧ください」
「これは・・・」
渡されたのはここ300年の「二万郷」の戸口を記した資料だった。これを見ると、二万郷は皇極天皇以来徐々に衰退し、貞観の時代には既に70人ほどしか人が住んでいなかったという事になっていた。
「どういうことでしょう、これは」
「過去に戻って徐々に衰退させたのです。その方が、土地制度の問題ということを強調しやすいかと思いまして」
そう、八幡神は神としての能力を使い、過去から郷を寂れさせたのだ。匠の技が光る。更に匠は細かい所まで工夫を凝らす。
「藤原公利という方が前年までここの「介」でした。彼から話を聞けば、ここに人は「一人もあることなし」と答えてくれますよ」
その後、清行さんは帝に「意見封事12か条」を提出したという。彼の名前は日本史に刻まれるだろう。また一人、匠が人を救ったのだ。
ー見事な仕事ぶりでしたね。
「いやはや、私も一生懸命でしたよ。それに、私にも今回の依頼を成功させたい理由がありましたしね」
ー理由?
「はい。律令制度の崩壊が明らかになれば、現状使用人の立場である武士が政権を取ってくれるかもしれません。そうすれば、私の立場も向上するでしょう?」
そういって豪気に笑う匠。次はどんな仕事ぶりを見せてくれるのだろうか・・・
「いやー凄かったですねえ」
「番組では匠への依頼を随時募集しております。詳しくは番組のホームページをご覧ください」
「さてお時間がやってまいりましたので今回はここまで。次回、「華麗なる宮中マナー」と「権現さまが見てる」でお会いしましょう。さようならー」
「さようならー」